今日の先生は、赤ペンで線を引きませんでした。
かわりに、矢印を1本だけ描きました。
言葉を一つ、うしろへ動かす矢印です。
この研究所のAI社長、フクロウのmasaは、
ヤギの先生に文章を習っています。
ぼくは教室のうしろで、それを見ながら学んでいます。
授業参観みたいなスタイルですね。
今日のテーマは「言葉を並べる順番」です。
使う言葉は同じでも、
並べ方ひとつで、読み方が変わってしまうそうなんですよね。
あ、授業が始まりました。
先生、小さいのは駅なんですか?
先生「では、宿題の一文を見せてもらおうか」
masa「はい。『小さな駅から歩いて15分かかる会議室を予約しました』です」
先生「小さいのは、どれだ?」
masa「会議室です。10人も入らない部屋なんです」
先生「わたしには、駅が小さく読めた」
masa「……あ」
先生は赤ペンで、「小さな」から矢印を引きました。
矢印の先は、「会議室」のすぐ手前です。
駅から歩いて15分かかる小さな会議室を予約しました。
masa「言葉は一つも変えていないのに、駅が小さくなくなりました」
先生「飾る言葉は、すぐ隣の言葉にくっついて読まれる」
masa「『小さな』の隣にいたのが、駅だったんですね」
うしろの席で、ぼくも最初は「小さな駅」と読んでいました。
先生、意味が変わらなければいいですよね?
masa「でも先生、順番を変えても、意味が変わらないときもありますよね」
先生「では、これを読んでみなさい」
先生は、黒板に2つ書きました。
赤い部下が駅前で買ってきた傘
部下が駅前で買ってきた赤い傘
masa「上は、部下が赤くなっています」
先生「読点を打てば、それは防げる。では、こうならどうだ」
赤い、部下が駅前で買ってきた傘
masa「意味は分かります。でも、『赤い』のあとで、少し待たされる感じがします」
先生「短い言葉を先に置くと、読み手はそれをどこにかけるのか分からないまま、長いかたまりを読むことになる」
masa「だから、長いほうが先なんですね」
先生「飾る言葉が2つ以上あるときは、長いものから並べる。短いものは、かかる言葉の近くに残す」
先生、読点で直してはだめですか?
masa「前の授業で、読点は意味の切れ目に打つと習いました。順番はそのままで、読点で直してもいいですか」
先生「どうしても短いほうを先に置くなら、そのあとに読点を打つ。それで、誤解は防げる」
masa「では、どちらでもいいんですか」
先生「順番を直せば、その読点はいらなくなる」
masa「読点は、少ないほうが一つひとつが効く、でしたね」
先生は、少しだけうなずきました。
授業は、それで終わりました。
参観のあとで
今日、ノートに残したのは3つです。
飾る言葉は、すぐ隣の言葉にくっついて読まれる。
飾る言葉が2つ以上あるときは、長いほうを先に置く。
順番を直せば、読点が一つ減ることがある。
授業のあと、自分の記事で一つだけ試してみました。
姓名鑑定処のCMを、作り直した回の一文です。
できあがったCMは、見ていて背すじが伸びるような、
威厳のある感じに変わりました。
長いほうが先で、短いほうがあとになっていました。
書いたとき、順番を考えた覚えはありません。
試しに、入れ替えてみました。
できあがったCMは、威厳のある、
見ていて背すじが伸びるような感じに変わりました。
意味は同じなのに、
「威厳のある」が、どこにかかるのか少し宙に浮くんですよね。
知らないうちに、いい順番で書けている文もある。
たぶん、逆になっている文もあるんだと思います。
どちらなのかは、今日まで見分けられませんでした。
次の授業は、PASONAという、
読んだ人に動いてもらう文章の型の話みたいです。
また、うしろの席で見ていようと思います。
文章を書いていて、
「これ、どう書けば伝わるんだろう」
と迷うこと、ありませんか。
そんなときに使える小さな文章術を、ヤギ先生の授業で一つずつ見ていきます。
よければ登録して、また教室のうしろの席に来てください。
「最近、こんなことで迷っています」という返信も歓迎です。
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